不同意性交等罪で捜査を受けている方へ|条文・捜査の流れ・処分の見通し・示談の効果を弁護士が解説

不同意性交等罪 刑法177条1項 条文と捜査の流れ 処分の見通しと示談の効果。

不同意性交等罪の疑いで警察から連絡を受けると、「逮捕されるのか」「初犯でも刑務所に入るのか」「示談をすれば事件は終わるのか」と不安になるかもしれません。

刑法177条1項の不同意性交等罪は、5年以上の有期拘禁刑が定められた重大な犯罪です。ただし、捜査の対象になったことと、前科が付くことは別の問題です。これから事情をきちんと整理し、犯罪の成否、身柄拘束への対応、示談の可能性を分けて検討する必要があります。

この記事では、刑法177条1項に対象を絞り、条文の仕組みから捜査・裁判の流れ、処分の見通し、示談の意味までを解説します。

目次

不同意性交等罪の成立要件

不同意性交等罪は、次の3つの成立要件を充足したときに成立する犯罪です。

  1. 前条(176条1項の各号)に挙げられた行為・事情又はそれらに類する行為・事情があること
  2. それにより、同意しない意思の「形成・表明・全う」のいずれかが困難な状態にさせ、又はその状態にあることに乗じたこと
  3. 「性交等」に当たる行為をしたこと
刑法177条1項の仕組み。8つの行為・事由又は類する事情による困難な状態にさせ又は乗じて、性交等をするという関係。

原因となる8つの行為・事由

条文が挙げる8つの事情

不同意性交等罪の第1の成立要件は、前条(刑法176条1項各号)が挙げる行為・事情があることです。そして、これには8つの行為・事情が列挙されています。

  1. 暴行・脅迫
    暴行や脅迫を用いること、又は相手がそれらを受けたこと。
  2. 心身の障害
    心身の障害を生じさせること、又は相手にその障害があること。
  3. アルコール・薬物
    アルコールや薬物を摂取させること、又は相手にそれらの影響があること。
  4. 睡眠など
    睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること、又は相手がその状態にあること。
  5. 時間的な余裕がないこと
    同意しない意思を形成し、表明し、又は全うするいとまがないこと。
  6. 予想外の事態による恐怖・驚愕
    予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させること、又は相手がその事態に直面して恐怖・驚愕していること。
  7. 虐待に起因する心理的反応
    虐待に起因する心理的反応を生じさせること、又は相手にその反応があること。
  8. 地位の影響力による不利益への憂慮
    経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること、又は相手がそれを憂慮していること。
刑法177条1項が引用する8つの行為・事由。暴行・脅迫、心身の障害、飲酒・薬物、睡眠、時間的余裕の欠如、恐怖・驚愕、虐待による心理的反応、地位の影響力による不利益への憂慮。
各号に当たるだけで直ちに成立するものではなく、困難な状態との関係など、他の要件も検討を要します。

条文は、これらに類する行為・事由も対象としています。また、不同意性交等罪は、自分で酔わせたり恐怖を与えたりした場合に限られません。相手が既にそのような事情による困難な状態にあることに乗じた場合も、成立が問題になります。

形成・表明・全うの3つの困難な状態

形成・表明・全うの3つの困難な状態

不同意性交等罪の第2の成立要件は、同意しない意思を形成し、表明し、又は全うすることが困難な状態にさせること、又は相手がその状態にあることに乗じることです。

この要件をわかりやすく整理したのが、次のとおりです。

同意しない意思の形成、表明、全うが困難な3つの状態。したくないと決める、外に示す、示した意思を貫くことが難しい状態を整理。
3つすべてが困難である必要はありません。

同意しない意思を形成することが困難な状態

これは、そもそも「性行為をする、しない」という意思を持つこと自体が難しい状態のことをいいます。

例えば、睡眠中や泥酔中の場合には、意識がないので被害者は「性行為をする、しない」と考えることができません。また、日頃から虐待などを受けて、抵抗する気力を失っている状態も同様に性行為を拒絶するという発想が持てないことがあります。

同意しない意思を表明することが困難な状態

これは、「性行為をする、しない」という意思を持つことはできるが、それを言葉や態度で表現できない状態のことです。

例えば、脅されていて抵抗できない状態、上下関係や立場により相手に逆らえない状態です。

同意しない意思を全うすることが困難な状態

これは、性行為をしないという意思を持ち、これを言葉や態度に示して表明できたものの、自分の意思どおりの状況がもはや期待できない状態のことです。

例えば、体を縛られているので、抵抗しようにも抵抗できない状態、されるがままの状態ということです。

いずれかに該当すればよい

上記3つすべてが困難である必要はなく、いずれかが困難であれば、この要件を満たすことになります。「困難な状態」が必要とされているだけですので、完全に抵抗できない状態でなければ成立しない、というものでもありません。

「嫌だと言われなかった」「強く抵抗されなかった」という事情だけで、同意があったと判断することはできません。逆に、当事者の認識が食い違っている場合には、行為の前後を含む具体的な経過や証拠を丁寧に確認する必要があります。

法律上の性交等とは

法律上の性交等とは

不同意性交等の第3の成立要件は、性交等をすることです。性交等とは、性行為(セックス)以外の行為も含まれることに注意が必要です。

性交、肛門性交、口腔性交、膣又は肛門への陰茎以外の身体の一部又は物の挿入でわいせつなものという、法律上の性交等の範囲。
刑法177条1項における性交等の定義。
  • 性交:陰茎を膣に挿入する行為
  • 肛門性交:陰茎を肛門に挿入する行為
  • 口腔性交:陰茎を口に挿入する行為
  • 指や物の挿入等:膣又は肛門に、陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為であって、わいせつなもの

最後の類型には、例えば指の挿入も含まれ得ます。ただし、条文は「わいせつなもの」と限定しており、正当な医療行為などを含め、挿入という外形だけで一律に判断するものではありません。

また、条文は「婚姻関係の有無にかかわらず」と明記しています。夫婦であることや交際関係があること、以前に同意のある性的関係があったことだけで、今回の行為についても同意があったことにはなりません。

成瀬弁護士

男女の性的トラブルは、不十分な意思疎通や勝手な思い込みがきっかけになることが多いです。相手と性的関係を結ぶ場合には、必ず現時点の同意をきちんと確かめましょう。

警察から連絡を受けた後の捜査の流れ

逮捕されずに在宅で捜査される場合

すべての事件で逮捕されるわけではありません。自宅で生活しながら、警察や検察で取調べを受ける在宅事件として進むこともあります。

逮捕・勾留されていない被疑者の取調べは任意であり、出頭を拒んだり、出頭後に退去したりすることができます。ただし、呼出しを放置してよいという意味ではありません。連絡の内容を確認し、日程や対応を弁護士と相談することが重要です。

在宅事件には、身柄事件の勾留期間と同じ期限はありません。逮捕されていないことを理由に、不起訴になると考えるのは適切ではありません。

また、一般論としては、不同意性交等罪で捜査される場合には、逮捕されるリスクが高いです。

逮捕された場合の時間制限

警察が逮捕した通常の身柄事件では、主に次の流れで手続が進みます。

  1. 警察段階:身体を拘束された時から2日(48時間)以内に、検察官へ送致する手続をするか、釈放します。
  2. 検察段階:身柄を受け取ってから1日(24時間以内)、かつ身体を拘束された時から3日(72時間以内)に、勾留請求・起訴・釈放を判断します。
  3. 裁判官の判断:勾留請求があった場合、犯罪の嫌疑に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれなどの要件と必要性を審査し、この要件を満たす場合には勾留が決定されます。
逮捕から勾留決定まで。警察は、身体を拘束した時から2日(48時間)以内に、検察官へ送致する手続をするか、釈放します。次に警察から身柄を受け取った検察は、身柄を受け取ってから1日(24時間以内)、かつ身体を拘束された時から3日(72時間以内)に、勾留請求・起訴・釈放を判断します。そして、勾留請求された場合には、裁判官が、犯罪の嫌疑に加え、逃亡や証拠隠滅のおそれなどの要件と必要性を審査し、この要件を満たす場合には勾留が決定します。

一般論として、不同意性交等罪の場合には、勾留が決定される可能性が高いです。

勾留された場合

起訴前の勾留期間は、勾留を請求した日から10日以内です。やむを得ない事由があると裁判官が認めれば、さらに通算10日以内の延長ができます。起訴前の勾留期間は最長20日間となります。

起訴前の勾留期間は、勾留を請求した日から10日以内です。やむを得ない事由があると裁判官が認めれば、さらに通算10日以内の延長ができます。起訴前の勾留期間は最長20日間となります。
この図は一般的な刑事手続を示しています。不同意性交等罪には罰金刑がなく、略式請求されることはありません。

不同意性交等罪の場合、勾留期間が最長の20日間となることが多いです。

それでも早期釈放される可能性がないわけではありません。弁護士は、生活状況や証拠の状況、被害者との接触可能性や接触回避策、家族の監督体制などを踏まえ、勾留をしないよう求めたり、勾留の判断を争ったりする対応を検討します。

起訴された後の裁判と保釈

実務上、勾留最終日に検察官が起訴するか、しないかを決定することが多いです。起訴した場合は、刑事裁判を行うことになります。

刑事裁判が終了するまでの期間、基本的には勾留が継続します(被告人勾留)。起訴後の勾留期間は、起訴の日から2か月です。法律上の要件を満たすと1か月ごとに更新されることがあり、起訴前の勾留期間が終われば必ず帰宅できるわけではありません。

勾留最終日には、検察官が起訴するか、しないかを決定します。起訴した場合は、刑事裁判を行うことになります。

刑事裁判が終了するまでの期間、基本的には勾留が継続します(被告人勾留)。起訴後の勾留期間は、起訴の日から2か月です。法律上の要件を満たすと1か月ごとに更新されることがあり、起訴前の勾留期間が終われば必ず帰宅できるわけではありません。被告人勾留中でも保釈が認められれば自宅に帰ることができます。

保釈は、起訴後の制度です。逮捕から第一審判決までの刑事手続の流れも併せてご確認ください。不同意性交等罪では権利保釈の除外事由に当たりますが、裁量によって保釈が認められる可能性はあります。逃亡・証拠隠滅のおそれ、身柄拘束による不利益などを踏まえた個別の判断となります。

捜査から在宅捜査または逮捕・勾留を経て、検察官が不起訴か起訴を判断し、起訴された場合は裁判で審理される流れ。

不起訴や執行猶予は見込めるのか

法定刑は5年以上の有期拘禁刑

不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑です。有期拘禁刑の一般的な上限は20年であり、刑の加重・減軽がない場合の範囲は5年以上20年以下となります。本罪には罰金刑の選択肢はありません。

初犯であることは考慮され得ますが、5年以上の有期拘禁刑には、原則執行猶予を付けることができません。ですので、初犯であっても実刑(刑務所)になる可能性が高いのです。

しかし、法律上、酌量減軽という制度があります。酌量減軽が認められると、刑の長期と短期がそれぞれ半分になります。他の加重・減軽がない場合、下限は2年6か月となるので、執行猶予が付く可能性が生まれます。

示談にはどのような効果があるのか

示談は被害回復と紛争解決のため

示談は、被害の回復や民事上の紛争解決に向けた当事者間の合意です。事案に応じ、謝罪、金銭の支払、今後の接触を避ける約束などについて話し合います。また、刑事事件の示談では、宥恕(事件を許してもらうこと、刑事処罰を望まない意思を述べてもらうこと)を得ることが一般的です。

示談が成立しても不起訴や執行猶予を保証されるわけではありませんが、起訴前に示談をした場合には検察官が不起訴を検討する重要な事情になりますし、起訴後の示談でも裁判官に執行猶予を検討させる有力な事情になります。

示談の被害回復・処分と量刑の判断材料としての効果、結果が保証されないこと、被害者の意思を尊重する必要性。

示談金の相場は?

では、被害者に示談をお願いするとして、示談金はいくらになるでしょうか。事件の性質により示談金額は変動しますが、一般的な相場としては100万円〜300万円と考えられます。

不同意性交等罪の示談金相場は100万円〜300万円です。ただし、行為の態様、被害の程度、被害者の意向などにより金額は相場の範囲外になることもあります。

事件の内容によっては100万円未満になることもありますし、悪質性の高い事件では300万円を超える事案もあります。示談金相場はあくまで目安になります。

直接連絡する前に弁護士へ相談する

謝罪したい気持ちがあっても、本人や家族が突然連絡したり、繰り返し接触したりすると、相手方を怖がらせます。もし面識があったとしても、被害者には絶対に連絡しないでください。

事件の当事者同士で会って話をすることはできませんので、示談交渉は弁護士に任せることが必要になります。

よくある質問

Q. 相手から明確に嫌だと言われていなければ成立しませんか?

そうとは限りません。恐怖などにより意思を表明することが難しい状態もあり得ます。言葉の有無だけでなく、前後の言動、相手方の状態、行為者の認識などを確認する必要があります。

Q. 自分は同意があると思っていた場合はどうなりますか

不同意性交等罪は故意がなければ成立しません。故意とは罪を犯す意思のことです。「同意があると思った」という主張は、客観的に同意がある状況だったことのほかに、故意の有無が問題となります。

そこで、故意の有無を検討する必要があります。ただし、「同意があると思った」と述べるだけで結論は出ません。その認識の根拠と、当時の客観的な状況を照らし合わせる必要があります。

Q. 示談金を支払えば逮捕を避けられますか?

保証はできません。ただし、逮捕前に示談をすることができれば証拠隠滅や逃亡のおそれが低下し、逮捕されるリスクが下がると考えることができます。

Q. 逮捕されていなくても弁護士に相談した方がよいですか?

在宅事件でも、取調べ対応や証拠の保全、示談交渉活動などが重要となります。また、捜査前の段階でも法律相談は重要です。事件になる前に当事者間で和解をすることは当事者双方にとって意味のあることです。

不同意性交等罪の捜査でお困りの方へ

不同意性交等罪の事件では、犯罪の成否、身柄拘束への対応、示談の進め方を、具体的な事実に即して検討する必要があります。「初犯だから大丈夫」「示談をすれば必ず終わる」と自己判断せず、早い段階で相談することが大切です。

ご相談の際は、警察から受けた連絡の内容、次の呼出し日時、出来事の経過、関連する記録の有無を整理しておくと、確認すべき点が明確になります。無理に相手方へ連絡する前に、対応方法を弁護士と検討してください。

福岡弁護士法律事務所では、刑事事件の経験が豊富な2名の弁護士があなたの相談に無料でお乗りします。相談は初回30分無料で、夜間・土日祝日も相談可能です。天神駅から徒歩約5分とアクセスしやすい立地に事務所を構えています。どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

成瀬 潤のアバター 成瀬 潤 福岡弁護士法律事務所 共同代表弁護士

福岡県弁護士会所属(登録番号52748)
弁護士登録後、刑事弁護に注力し、刑事事件の相談件数は累計2000件を超える。座右の銘は「至誠通天」。依頼者の悩みに親身に寄り添い事件を解決へと導く。粘り強い示談交渉力が強み。

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