【量刑不当】刑が重すぎて刑事裁判の一審判決に納得がいかない方へ|控訴で刑を軽くする

「予想もしなかった実刑判決を言い渡された」 「執行猶予がつくと思っていたのに、刑が重すぎる」
第一審の判決を受け、絶望や不安を抱えている方は少なくありません。しかし、日本の刑事司法制度には、まだ判決を覆すチャンスが残されています。それが「控訴(こうそ)」です。
控訴は、第一審の判決に不服がある場合に、上位の裁判所(高等裁判所)に対して再度の審理を求める手続です。
ただし、控訴審は第一審の裁判を最初からやり直す場所ではありません。非常に厳格なルールと、限られた時間の中で進められる、専門性の高い戦いです。
この記事では、福岡の弁護士が、刑事事件の控訴したい方に向けて控訴の方法や期限、控訴審の審理の特徴を分かりやすく解説します。
- 控訴とは何か
- 控訴できる理由(条件)
- 控訴の申立て期限
- 控訴の申立て方法
- 控訴審の審理
控訴とは?一審判決を覆すための法的手段
控訴とは、第一審の判決に対して不服がある当事者(被告人または検察官)が、判決の確定を阻止し、高等裁判所に対して判決の変更を求める申立てのことです。
日本の刑事裁判は、慎重に審理を行うために「三審制」をとっています。地方裁判所などの判決に納得がいかない場合は高等裁判所へ「控訴」し、高等裁判所の判決にも納得がいかない場合は最高裁判所へ「上告」することができます。
控訴ができる5つの理由(控訴理由)
法律上、控訴は「単に判決が気に入らないから」という理由だけでは認められません。判決を覆すに足る「控訴理由」が必要です。控訴理由は以下の5つに分類されます。
法令違反
法令違反とは、第一審の裁判手続が法令に違反する重大な過誤があったという主張です。例えば、3人の裁判官で裁判をしなければならないのに1人の裁判官が裁判した場合、判決に理由を付けなかった場合、適法に証拠調べをしていない証拠に基づいて事実認定した場合など様々な法令違反があります(刑訴法377条〜379条)。
事実誤認
事実誤認とは、第一審の判決が認定した事実が間違っているという主張です。例えば、「無罪を主張しているのに有罪とされた」「故意はなかったのに、故意があったと判断された」というケースがこれに該当します(刑訴法382条)。
法令適用の誤り
法令適用の誤りとは、違う犯罪の法令を適用した場合、法令の解釈を間違えた場合などです(刑訴法380条)。
量刑不当
量刑不当とは、言い渡された刑罰が、犯罪の重さや情状(反省の態度、被害弁償の有無など)に比べて「重すぎる」という主張です。実刑判決を執行猶予付きの判決に変えたい場合や、刑期を短くしたい場合は、この量刑不当を主張します(刑訴法381条)。
再審事由等
再審事由に該当する場合や判決後に刑の廃止や変更、大赦があった場合です(383条)。
最も多いのは「量刑不当」
刑事事件の控訴理由で最も割合が多いのは「量刑不当」です。一審判決の後に示談が成立した、あるいは新たな環境調整(依存症の治療開始など)が進んだといった「新事情」を提示することで、刑の減軽を目指します。
量刑不当として控訴理由になるもの
量刑不当とは、第一審の判決(宣告刑)が重すぎる、軽すぎるという場合です。量刑不当として控訴理由になるものは、次の内容が不当だとして争うなど場合です。
- 主刑(死刑・拘禁刑・罰金・拘留・科料)
- 付加刑(没収)
- 執行猶予
- 保護観察
- 未決勾留日数の刑への算入日数
- 罰金や科料の換刑処分
控訴手続の方法は?期限はある?
量刑不当で控訴を検討している方へ向けて、控訴の方法や期限などをご説明します。
控訴期限:1日でも過ぎると判決は確定する
控訴ができる期間(控訴期間)は、第一審の判決が言い渡された日の「翌日」から数えて14日間です。
ただし、期間の最終日が土日祝日、12月29日〜1月3日の年末年始に当たる場合には期間に算入されないので、控訴期間が延びます。
- 例:3月1日に判決が言い渡された場合
- カウント開始:3月2日
- 控訴期限:3月15日の24時まで
この14日間の期限を1秒でも過ぎてしまうと、控訴する権利は完全に消滅します。いかなる事情があっても、この期限を経過すると判決が確定して、控訴することができなくなります。
控訴の申立てができる人
控訴の申立てができるのは、次の者たちです。
- 被告人(判決を受けた人)
- 被告人の法定代理人または保佐人
- 原審の代理人・弁護人(第一審を担当した弁護士)
第一審の判決を言い渡された後に、依頼を受けた弁護士は「原審弁護人(第一審を担当した弁護士)」には該当しませんが、被告人の代理人という立場で控訴することができます。
控訴の申立て方式
控訴の申立ては、控訴申立書を第一審裁判所に提出すて行います。控訴審は高等裁判所で開かれますが、控訴の申立ては第一審に行う点に注意が必要です。
電報による控訴の申立ては不適法です(最決昭和25.12.5)。また、弁護士であれば記名押印でよいのですが、被告人本人が控訴の申立てをする場合には自署が必要とされています(最決昭和40.7.20)。
また、控訴は判決の全体が不服であるとして申立てをすることもできますし、判決の一部のみを不服として申し立てることも可能です。判決の一部について控訴する場合には控訴申立書に不服箇所を明記することが必要です。
控訴申立てから控訴趣意書提出までの流れ
控訴審の手続きは、以下のようなステップで進行します。
判決言渡しの翌日から14日以内が控訴期間です。
これを経過すると判決が確定してしまいます。
第一審の裁判所へ提出します。
例えば、福岡の場合には、第1刑事部〜第4刑事部(福岡地裁6階)まであります。ご自身の裁判を担当した係属部に行って控訴申立書を提出します。
控訴審では、控訴趣意書という控訴理由を記載した書面を事前に提出する必要があります。控訴趣意書の提出期限は、通常数週間〜1ヶ月程度となります。控訴審の成否は、この控訴趣意書の出来栄えで9割決まります。
通常は1回で結審します。
控訴審の判決は、控訴棄却、破棄差戻し、破棄移送・破棄自判などがあります。実務上、量刑不当で一審よりも軽い刑を言い渡す場合、破棄自判することが一般的です。
控訴審の実態:第一審とは決定的に違う「書面重視」の裁判
多くの人が「控訴審でもう一度、証人尋問や被告人質問をやり直してもらえる」と誤解しています。しかし、それは大きな間違いです。
刑事事件の控訴審は、「事後審」という性格を持っています。これは、「第一審の判決が、その時点の証拠に照らして妥当かどうか」を後から検証する裁判のことを指します。
| 第一審(原審) | 第二審(控訴審) |
|---|---|
| ゼロから証拠を調べて有罪無罪・量刑を決める裁判 | 第一審(原審)の判決に不自然・不合理な点がないかをチェックする裁判 |
そのため、控訴審では基本的に、新しく証人を呼んで尋問したり、被告人が法廷で受け答えする機会は原則としてありません。裁判官は、弁護人が提出した「控訴趣意書」と、一審の記録を読み比べることで、ほぼすべての判断を下します。
実際、控訴審の第1回公判は、弁護人が「控訴趣意書通りに主張します」、検察官が「控訴棄却を求めます」と述べるだけで、わずか数分〜十数分で結審(審理が終了)することがほとんどです。
控訴に踏み切れる保険が用意されている(不利益変更禁止の原則)
控訴をするべきか悩んでいる方のために、安心できる制度をご説明します。
もしあなたが量刑不当を理由に控訴した結果、控訴審の裁判所が第一審の判決より重い刑を言い渡したら、あなたは控訴により不利益を被ることになります。
このように第一審の判決より刑が重くリスクがあるなら、誰も控訴しなくなってしまいます。そこで法律は、被告人側が控訴をした場合には第一審の判決より重い刑を言い渡すことができないというルールを定めました。これを不利益変更禁止の原則といいます。
ですので、あなたが控訴しても、今以上に重くなることはありません。
検察官も控訴した場合は別
一審の判決が軽すぎるとして、検察官側も控訴(検察官控訴)してきた場合は、一審よりも刑が重くなる可能性があります。検察官が控訴するかどうかは、弁護士を通じて慎重に見極める必要があります。
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