【示談】示談書に盛り込むべき重要事項|清算条項・宥恕条項は最重要!記載漏れにも注意!

刑事事件の加害者となってしまい、不安な日々を過ごされていることとお察しいたします。
刑事事件において、刑事処罰を左右する最も重要な要素が「被害者との示談」です。
しかし、示談書の内容に不備があると、せっかく合意しても検察官や裁判官に評価されず、前科がついてしまうリスクが残ります。また、追加で損害賠償請求をされてしまう可能性もあります。
そこで本記事では、福岡で刑事事件に注力してきた刑事弁護士の視点から、示談の重要性、示談で注意すべき形式面、示談書に盛り込むべき規定を解説します。
- 示談の重要性
- 示談で注意すべき形式面
- 示談書に盛り込むべき規定

示談の重要性
まずは示談の重要性を確認しましょう。
一般に、刑事事件の示談では、次のようなメリットを享受することができます。それゆえに「刑事事件では示談が重要である」と言われるわけです。
- 不起訴処分の獲得できる(前科を回避)
- 刑事処罰の軽減が期待できる
- 早期釈放を実現できる
- 民事的解決ができる(金銭面の解決)
- 資格剥奪を回避できる
- 海外渡航不可を回避できる
不起訴処分の獲得できる(前科を回避)
示談のメリット1点目は、不起訴処分を獲得できることです。
不起訴とは、検察官が公訴を提起しない処分のことを言います。つまり「裁判なし・処罰なし・前科なし」ということです。
不起訴処分を獲得すれば、刑事事件を起こしても、ご自身の経歴に大きな傷が付くことを防ぐことができるのです。
日本の刑事事件においては、起訴されると99%以上が有罪だと言われています。有罪となれば当然前科が付きますし、容疑を認めている事件で無罪判決を得ることはまず考えられないので、前科を避けるためには不起訴処分を目指す必要があります。
示談が成立して、被害者との間で「加害者を許す」という宥恕文言を含んだ示談が成立していれば、検察官は「当事者間で解決済みであり、これ以上国が処罰を科す必要はない」と判断し、不起訴にしてくれる可能性が飛躍的に高まります。
このように、不起訴処分を獲得するために示談は非常に重要な意味を持ちます。
刑事処罰の軽減が期待できる
示談のメリットの2点目は、「刑事処罰の軽減が期待できること」です。
これまでの前科前歴や悪質性が高いなどの理由で、不起訴処分が獲得できなかったとしても、示談をしていることにより、刑事処罰の軽減が見込めます。
例えば、
- 実刑確実であったが、示談により執行猶予を得ることができた
- 裁判するはずだったが、略式罰金で済んだ
ということです。
もちろん宥恕付きの示談をしていることが望ましいですが、宥恕がなかったとしても和解(宥恕なし示談)が成立していたり、被害弁償をしていれば、小〜中程度の効果が見込めます。
早期釈放を実現できる
示談のメリット3点目は、「早期釈放が実現できる」ことです。
例えば、勾留されてしまっても、早期に示談を締結したことにより、勾留期間の途中で釈放される事例は多く存在します。また、示談をしたことにより保釈が通るという事例もよくあります。
示談をしたことによって、「加害者が被害者に対して不当な接触を図る危険は低減した」「刑事処罰を恐れて逃亡する危険も低減した」と評価される傾向にあるからです。
ですから、早期釈放の実現のためには、早期に示談をすることが肝心です。
また、逮捕されていない場合にも示談が有効と言えます。なぜなら、逮捕前に示談をすることによって、逮捕されるリスクを下げることができるからです。
このように、示談には早期釈放の可能性を高める効果があります。
民事的解決ができる(金銭面の解決)
示談のメリット4点目は、民事的解決ができることです。
犯罪行為は、民事上は不法行為に該当するので、被害者は、加害者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をする権利を有します(民法第709条)。
しかし、示談の中に清算条項(今後、本件に関してお互いに金銭請求を行わないこと)を盛り込むと、それ以降の金銭的な問題も含めて解決したことになります。
ですので、清算条項があると、被害者は加害者に対して追加で損害賠償を請求できなくなりますし、加害者は被害者に対して損害賠償を支払う義務を負わなくなります。
このように、清算条項を含む示談をすると、将来的に追加で損害賠償請求されるリスクをなくなります。
資格剥奪を回避できる
示談のメリット5点目は、資格剥奪を回避できることです。
これは、示談をして不起訴になった派生的効果と言えますが、国家資格を持っている人は資格の取消しや資格の停止を回避することができます。
これから国家資格を取ろうとしている人も、何も気にせずに資格試験に挑むことができます。
また、公務員の方は拘禁刑以上の刑(執行猶予を含む)を受けると当然に失職します。罰金刑であっても、懲戒処分は避けられないでしょう。
しかし、示談をして不起訴になれば、当然失職することを回避することができますし、懲戒処分の被害も抑えることができます。
海外渡航不可を回避できる
示談のメリット6点目は、海外渡航不可を回避できることです。つまり、引き続き海外に自由に行くことができます。
これも示談をして不起訴処分を獲得した派生的効果と言えます。
海外で生活している方やビジネスで海外出張が多い方の場合、海外に渡航できないことは将来を左右する重大事です。
もし刑事処罰を受ければ、海外に渡航できないリスクが生じますが、示談をして不起訴や刑の軽減ができれば、そのリスクを回避できます。
示談書の作成は必須:口約束で終わらせない
このような示談の重要性をご理解していただいた皆さまの中には「示談を試みよう」という方もいらっしゃると思います。
基本は弁護士を付けて交渉しなければ示談をすることはできませんが、例外的なケースでは当事者間で示談をすることもあるでしょう。
そこで、注意したいのが示談書の取り交わしです。
口約束だけで示談を終わらせる人もいますが、それは非常に危険です。
- 示談書を取り交わしていないことを口実に追加で示談金を請求してくる事例
- 示談しているにもかかわらず警察に被害届を出されて前科が付く事例
なども散見されます。
このような示談後のトラブルを回避するために、必ず示談書の取り交わしをしましょう。
示談書の作成で注意すべき形式面
では、示談書を作成するとして、どのような点に注意すべきでしょうか?
形式面と内容面でそれぞれ注意点があるので、まずは形式面から確認していきましょう。
形式面で注意すべき点は次のとおりです。
- 示談は事件の当事者間で取り交わす
- 自筆・押印をすること
- 示談書は当事者の人数分作成する
示談は事件の当事者間で取り交わす
例えば、加害者と被害者Aとの事件について、被害者の知人Bが自称代理人として、加害者本人と被害者の知人Bが示談を締結するケースがあります。
知人に有効な任意代理権があれば許容範囲かもしれませんが、このような事例の多くは被害者本人から委任状を取り付けておらず、正式な代理権がないことが多いです。
このようなケースで被害者の知人と示談をしてしまうと、その示談の効力は無権代理として無効であったり、被害者本人に拘束力のない示談になってしまうリスクが生じます。
そうすると、あとになって被害者本人から別途損害賠償を請求されたり、警察に被害届を出されたりしてしまいます。
被害者が未成年の場合
被害者が未成年(18歳未満)の場合には、親権者が当然に未成年を代理します(法定代理人)。
ですので、被害者が未成年の場合には、親権者と交渉をして、親権者から署名押印をもらいましょう。
そして、共同親権が原則ですので、親権者父母両名から署名押印をもらうのが基本となります。
自筆・押印をすること
示談書は、加害者と被害者双方の署名が必要です。ですので、加害者側も被害者側も、必ずご本人が署名をしてください。
また、示談書には押印が必要ですので、双方がシャチハタ以外のハンコで押印をしてください。
示談書は当事者の人数分作成する
示談書は、当事者の人数分用意してください。
例えば、加害者と被害者の2名で示談書を取り交わすのであれば、同じ示談書を2部用意して、2部ともに両者の署名押印が必要になります。
そして、加害者が示談書1部、被害者が示談書1部をそれぞれ保管することになります。
風俗店とのトラブルで多いのですが、次のような事例が頻発しています。
- 風俗のサービスを利用中に、盗撮や本番行為をしてトラブルになった。
- トラブルの報告を受けて駆けつけた風俗店従業員が用意した示談書1部にサインをさせられて、その1部を風俗店従業員が持って帰った。
- そのため、加害者(客)側は、示談書の内容をうる覚えで、しかも確認のしようがない。
示談をした証拠を残して確認できるようにするため、必ず双方が保管するようにしましょう。
示談書に盛り込むべき規定
では、次に示談書の内容面について確認していきましょう。内容面では次の事柄が重要です。
- 事件の記載をすること
- 支払額・期限・支払方法を記載すること
- 清算条項を盛り込むこと
- 宥恕条項を盛り込むこと
事件の記載をすること
何について示談をするのか、示談の対象を特定するために、必ず事件の記載をしてください。
そして、事件は、①誰が、②いつ、③どこで、④誰に対して、⑤何をしたかを特定して記載します。
例えば、盗撮ですと、次のような記載をします。
本件は、甲(加害者)が、令和8年1月1日、東福岡市西天神区南東1-1-1所在のAショッピングモール5階の通路上において、乙(被害者)を盗撮した事件であることを確認する。
支払額・期限・支払方法を記載すること
示談では、加害者が被害者に対して示談金を支払うことになります。ですので、示談書の中には、支払額・期限・支払方法を書くようにしましょう。
例えば、次のように記載します。
- 甲(加害者)は、乙(被害者)に対し、本件の示談金として、金30万円の支払義務があることを確認する。
- 甲は、令和8年4月末日限り、前項の示談金を、乙名義のA銀行B支店の普通預金口座(番号:1234567)に振り込んで支払う。ただし、振込手数料は甲の負担とする。
金額、期限、支払方法を曖昧にすることは更なるトラブルの原因ですので、必ず明確にしておきましょう。
清算条項を盛り込むこと
清算条項を盛り込むことも非常に重要です。
示談金は損害賠償の性質を有します。もし示談金を支払った上で、追加で損害賠償金を支払うとなると、二重払いをすることになってしまいます。
ですので、二重払いを防ぐために清算条項を入れる必要があります。
清算条項とは、「甲及び乙は、本件に関し、本示談書に定める他、両者間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。」などと記載します。
これは、次の意味を有します。
- 本件について、被害者は加害者に対し、追加で賠償請求できない
- 本件について、加害者は被害者に対し、追加で賠償金を支払わなくていい
清算条項があることにより、将来的な損害賠償請求や民事訴訟という紛争の蒸し返しを予防することができます。
清算条項なし・対象範囲の限定
事件の性質によっては、清算条項を入れないケースや対象範囲を限定するケースがあります。
例えば、傷害事件について、後遺症が残る可能性のある場合には、被害者が追加で損害賠償を請求できるように次のような規定にすることがあります。
(清算条項の対象範囲を限定する例)
甲及び乙は、本件に関し、本示談書に定める他、両者間に何らの債権債務がないことを相互に確認する。ただし、後遺症に関する損害賠償についてはこの限りでない。
このように、万が一にも後遺症が残ってしまう可能性のある事案では、被害者が不当な不利益を被ることを防ぐため、別途損害賠償を請求できる余地を残しておくのです。
宥恕条項を盛り込むこと
刑事事件の示談にとっては、宥恕条項を盛り込むことが非常に大切です。
宥恕とは、許すという意味です。つまり、刑事事件では、「被害者が、今回に事件について加害者を許す。刑事処罰を望まない」ということです。
この宥恕があることで、刑事事件化を阻止できたり、不起訴処分や刑の軽減に繋がります。
反対に、この宥恕条項がない示談の場合には、示談後に刑事事件に発展する可能性がありますし、刑事処罰を科されます。
宥恕規定の一例は次のようなものです。
- まだ捜査されていない事件
乙(被害者)は、本件について甲(加害者)を許し、刑事処罰を望まないことにし、捜査機関に対して被害届の提出や告訴など刑事事件に発展する行動をしない。 - すでに捜査中の事件
乙(被害者)は、本件について甲(加害者)の刑事処罰を望まない。
このような宥恕条項があることによって、刑事事件上の解決が図られるのです。
示談のご相談なら福岡弁護士法律事務所へ
刑事事件の示談において、弁護士を介さない理由はほぼありません。なぜなら、刑事事件の示談では、次のような事情が存在するからです。
- 被害者と連絡が取れない
捜査機関は加害者に被害者情報を教えないので、弁護士を介さないと示談交渉ができません。 - 逮捕・身柄拘束延長のリスク
加害者が被害者に直接連絡することは、証拠隠滅行為と捉えられて、逮捕や身柄拘束の長期化を招きます。 - 法的妥当性の担保
示談で法的な不備をなくし、将来的なトラブル・事件の蒸し返しを予防するなら弁護士の専門知識は必須となります。
示談は契約の一種です。
理解しないまま契約書を作ることはできませんし、そもそも交渉自体が不可能でしょう。
テキトーに示談書を作って新たなトラブルの火種を作らないためにも、示談の際は弁護士に必ずご相談ください。
ご相談だけでもOKですし、示談書の添削や示談書作成も承っております。
まずは相談が解決の第一歩です。
もし、あなたや大切な人が刑事事件を起こしてしまったら、まずは冷静になり、示談のプロである弁護士に相談してください。
福岡弁護士法律事務所の所属弁護士は、長年に渡り、刑事弁護に注力してきたため、経験と実績が豊富です。私たちにあなたのお困り事をご相談ください。




