我が子や連れ子にわいせつ行為|監護者わいせつ罪の流れや示談について福岡の弁護士が解説。

監護者わいせつ罪の容疑をかけられ、激しい不安や恐怖を感じていませんか。「このまま逮捕されて仕事や家族を失うのではないか」「実刑になって刑務所に入ることになるのか」と。
監護者わいせつ罪は、家庭内や施設内など閉ざされた関係性で発生しやすく、被害者が18歳未満であるため、社会的な非難や警察の捜査が非常に厳しくなる傾向があります。
この記事では、監護者わいせつ罪の成立条件から、逮捕・捜査の流れ、示談交渉まで、刑事弁護士の視点から詳しく解説します。
- 監護者わいせつ罪の成立条件と伸長された公訴時効
- 逮捕のリスクと捜査の流れ
- 刑事処罰と執行猶予を獲得できるか
- 監護者わいせつで示談はありうるか。示談金の相場
どのような場合に監護者わいせつ罪が成立するか?
監護者わいせつ罪(刑法179条1項)は、18歳未満の者に対して、監護者としての影響力を利用してわいせつな行為をした場合に成立する犯罪です。
条文を確認する
(監護者わいせつ及び監護者性交等)
第179条1項 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条第1項の例による。
成立条件
本罪が成立するための要件は、以下の4点です。
- 現に監護する者が
- 18歳未満の者に対して
- その監護者の影響力を利用して
- わいせつな行為を行ったこと
「現に監護する者」の範囲
「現に監護する者」は、衣食住などの経済面や生活面、精神面において、18歳未満の子どもを養育・監護している場合に該当します。
例えば、実父母、養父母、経済的に支援をしている同居の親族(母親の交際相手、内縁の夫)などが該当します。
「現に」監護していることが必要なので、法律上父親であっても一緒に生活しておらず、連絡も一切取っていなかったような場合には、監護の実態がないので、監護者わいせつ罪は成立しません。
監護者かどうかは、同居の有無、経済的負担の有無やその金額、子どもに対する教育や指導の状況などの生活実態を考慮して判断することになります。
過去の裁判例では、3年以上別居していた実父の犯行につき、監護者わいせつ罪の成立を認めたものがあります(東京高判令和4年12月13日)。
東京高判令和4年12月13日
実子に対する監護者わいせつの事案。
被告人が3年以上別居していた実子と同居するようになったのは本件の1か月余り前であり、被害者の身の回りの世話等は主に祖母がしていたとしても、実父という立場に加えて、同居中に小遣い等の金品を与え、学校への送迎をし、進路等の相談に乗るなどの被告人と被害者の経済状況やその関係性、実母との関係悪化を相談してきた実子に対して被告人が祖父母方での生活を勧めて同居するに至ったという経緯等も考慮して、本件当時、被害者が経済的・精神的観点において被告人に継続的に依存し、保護されていたものと評価でき、被告人が刑法179条1項にいう「現に監護する者」に当たるとした。
「影響力の利用」とは?
18歳未満は精神的に未熟であることから、監護者のことを疑いなく信用したり、監護されていることを理由に無意識的に逆らえないことも珍しくありません。このような監護状況下で性的な行為をすることは、18歳未満の性的自由を侵害する違法性の強い行為と評価されます。
そこで刑法では、暴行や脅迫を用いていなくても「親の言うことを絶対」「逆らうとここに居られなくなる」といった、断れない心理を利用したわいせつ行為を禁止しているのです。
そのため、基本的に、監護者によるわいせつ行為は「影響力を利用した」と評価されます。
「わいせつな行為」の具体例
わいせつ行為とは、性欲を刺激、興奮または満足させるもので、性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為を指します。
例えば、次のような行為はわいせつ行為です。
- 子どもの胸や陰部を触る
- 自分の下半身を押し付ける
- キスをする
- 服を脱がせて裸にする、または撮影する
- 自己の性器を見せる、または触らせる
公訴時効の重大な法改正(2023年7月施行)
刑法改正により、性犯罪に対する公訴時効の期間が大幅に延長されました。さらに、「被害者が18歳に達するまでの期間」が時効期間に加算される仕組みが導入されています。
| 改正前 (旧法) | 改正後 (現行法) |
| 7年 | 12年 |
【重要】18歳未満の被害者における時効計算
被害者が18歳未満のときに起きた事件については、被害者が18歳になった時点から12年間の時効が進み始めます。
具体例:被害者が12歳のときに発生した事件の時効完成までの期間
18歳に達するまでの「6年間」は時効が進行しません。18歳になってから12年がカウントされるため、合計で18年が経過するまで時効は完成しません。
過去の出来事であっても、被害者が成人した後に警察へ被害届を提出し、突然捜査が始まるケースもありえることになります。
刑事手続の流れ:逮捕されるか?
監護者わいせつ罪で警察が捜査を開始した場合、手続は「身柄事件(逮捕)」と「在宅事件」の2ルートに分かれます。ただ、監護者わいせつ罪の場合は、逮捕される危険性が高い犯罪ですので、身柄事件の流れを確認していきます。
逮捕の期間は3日間です。
一般的に、逮捕されると警察署の留置施設で生活することになります。
監護者わいせつ罪は逮捕される可能性が高い犯罪です。
逮捕されると、逮捕期間中に検察庁に事件が送致されます。
送致とは、警察から検察庁に捜査が引き継がれることです。送致されると、検察庁に所属している検察官が捜査を行います。
送致後、検察官は勾留請求をするかしないかを判断します。
勾留請求とは、裁判官に対し、勾留をするように依頼することです。
検察官が勾留請求した場合には、勾留質問に進みますが、勾留請求をしなかった場合には、釈放されます。
監護者わいせつ罪の場合には勾留請求される可能性が高いです。
検察官が勾留請求した場合には、勾留質問に進みます。
勾留質問とは、裁判官が逮捕された人と面談をすることです。裁判官は、この勾留質問を踏まえて勾留するかどうかを判断します。
裁判官が勾留を決定すると、勾留期間が始まりますが、勾留請求を却下すると、釈放されます。
監護者わいせつ罪の場合には勾留される可能性が高いです。
勾留が決定した場合、基本の勾留期間は基本10日です。しかし、勾留は一度延長できますので、延長された場合には最大20日になります。
検察官の終局処分とは、起訴するか、不起訴にするかを決定することです。この終極処分は勾留の最終日(勾留満期日)に行われることが多いです。
起訴とは裁判にかけること、不起訴とは起訴しないことです。
起訴された場合には、引き続き勾留が続きます。この勾留期間を被告人勾留と言います。原則2か月で、その後は1か月ごとに更新され続けます。
起訴されてから裁判までの期間は1〜2か月前後です。争いのない事件では、1回目の裁判で審理を行い、2回目の裁判で判決が下されます。
有罪の場合には、実刑判決もしくは執行猶予判決の二択となります。
刑事処罰の内容と実際の処罰
監護者わいせつ罪の処罰規定
監護者わいせつ罪の法定刑は、不同意わいせつ罪と同様で、「6か月〜10年以下の拘禁刑」となっています。
なお、監護者わいせつ罪に罰金刑はありませんので、起訴されたら絶対に裁判になります。有罪判決が出た場合、選択肢は「実刑」か「執行猶予」の二択です。
実刑と執行猶予の分かれ目
単発的な比較的軽微なわいせつ行為であれば執行猶予判決となる可能性が十分あります。
しかし、初犯であっても、同居の親族という立場を利用して長期にわたりわいせつ行為を継続していた場合には、初犯から一発で実刑判決になる可能性があります。
不起訴や執行猶予を得るには、速やかに弁護士を介入させ、被害者への謝罪と被害回復(示談)を進める必要があります。
示談のメリットと示談金相場
監護者わいせつ罪でも示談はありうるか?
監護者わいせつ罪において、実刑を回避するための最重要事項が「被害者側との示談成立」です。
ただ、監護者わいせつ罪の場合には、家族間のトラブルであることが多く、我が子に対してわいせつ行為をしてしまった場合、そもそも示談交渉が難しい場合もあります。
しかし、事件によっては示談することができるケースもあります。実際に筆者は、連れ子に対する監護者わいせつ事案などで示談を締結したケースがあります。諦めずに示談交渉を進めることを考えましょう。
示談のメリット
- 不起訴処分の獲得(前科が付かない)
起訴前に示談が成立し、被害者側から「処罰を望まない」という意思(宥恕条項)を示してもらえれば不起訴の可能性が高まり、前科を回避できます。 - 早期の身柄解放(釈放)
逮捕・勾留されていても、示談が成立すれば「証拠隠滅や再犯の恐れが低下した」と判断され、速やかに釈放される可能性が高まります。 - 民事訴訟や損害賠償請求の回避
示談では清算条項を入れることが多いです。この清算条項を盛り込んで示談をすれば、あとから民事訴訟を提起されたり、損害賠償を請求される可能性がなくなります。
万が一、事件の悪質性から起訴されて裁判になった場合でも、示談が成立していれば執行猶予判決(刑務所に行かない)を得られる可能性が高まります。
監護者わいせつ罪の示談金相場
監護者わいせつ罪における示談金の一般的な相場は以下の通りです。
| 事件の態様 | 示談金目安 |
| 比較的軽微な犯行 (初犯・単発) | 30万円 〜 100万円 |
| 悪質・長期に及ぶ犯行 | 100万円 〜 300万円 |
※実際の金額は、行為の悪質性、期間、被害者の精神的苦痛の度合い、加害者の経済力などを総合して決定されます。
弁護士による示談交渉が不可欠な理由
刑事事件では、加害者本人が直接被害者やその保護者と交渉することは困難です。
- 被害者側が強い恐怖心や嫌悪感を抱いており、連絡を拒絶される。
- 直接連絡を取ろうとすること自体が「証拠隠滅・脅迫」と捉えられ、事態を悪化させる。
第三者であり、守秘義務を持つ弁護士が間に入ることで初めて、被害者側も冷静に話し合いのテーブルに着くことができます。
よくあるQ&A
Q. 同意の上での行為だったと主張すれば、罪にはなりませんか?
A. 監護者わいせつ罪では「同意があっても」犯罪です。
本罪は、監護者としての「影響力を利用したこと」自体を処罰する規定です。被害者が「嫌だと言わなかった」「拒絶しなかった」としても、それは監護者の影響によるもので、被害者の本心ではないと評価されるため、同意があったとしても犯罪は成立します。
Q. 我が子をぎゅっと抱きしめる行為は監護者わいせつ罪になりますか?
A. 抱きしめる行為(抱擁)はわいせつな行為ではないので、監護者わいせつ罪は成立しません。
Q. 監護者だと認識していない場合には、監護者わいせつ罪は成立しませんか?
A. 認識次第で監護者わいせつ罪が成立します。
「監護者である」と認識していなくても、同居している、身の回りの世話をしているか、子どもの生活費を負担している、などの生活実態を理解していれば、犯罪の故意は十分とされています。
Q. 警察から呼び出しの連絡が来ました。どう対応すべきですか?
A. 最初の取調べを受ける前に、必ず弁護士に相談してください。
警察からの呼び出しを無視すると、逃亡の恐れがあるとみなされ、突然自宅に警察官がやってきて逮捕されるリスクが高まります。そこで、警察の求めに応じて出頭すべきですが、事前に弁護士から「どの事実を認め、どの表現を警戒すべきか」などのアドバイスを受けておくことが、不利な状況を作らないための絶対条件です。
Q. 家族に知られずに解決することは可能ですか?
A. 被害者が同居の家族(実子や養子)である場合、家族に秘密にすることは困難です。
その場合は、弁護士が間に入って家族全体の今後の生活環境の調整(加害者の別居など)を含めた適切な弁護活動を行う必要があります。
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監護者わいせつ罪の容疑をかけられたとき、あなたの未来を守るために残された時間は決して多くありません。警察の捜査が進めば、ある日突然、自宅や職場に捜査員が押し寄せ、手錠をかけられる現実が待っています。
逮捕され、起訴されて前科が付けば、仕事、友人、社会的信用など、これまで築き上げてきたすべてを失うことになります。
取り返しがつかなくなる前に、早めに弁護士に相談しましょう。





