【資格喪失】公務員の刑事事件|前科が付くとどうなる?仕事は続けられる?

「刑事事件を起こしてしまった」
「犯罪をして警察から連絡があった…」
このように、刑事事件の加害者となり、お困りの公務員の方に向けた記事となっています。
公務員という職業は、国民全体の奉仕者として強い倫理観が求められます。
そのため、ひとたび刑事事件を起こし「前科」がつくと、本人の意思や任命権者の温情に関わらず、強制的に失職になるケースがあります。
この記事では、福岡で刑事事件に注力する弁護士が、刑事事件を起こした場合に、公務員が失職しなければならない場合、これから公務員を目指している人が公務員になれない場合、公務員で居続ける方法を解説します。
- 公務員の失職事由・採用不可事由
- 刑事事件を起こしてなお、公務員で居続ける方法

公務員が職を失う2つのパターン
公務員が刑事事件で職を失うケースには、大きく分けて「当然失職」と「懲戒免職」の2つがあります。
当然失職(失職事由)
国家公務員法および地方公務員法の規定により、公務員は、拘禁刑以上の刑事処罰を受けた場合には、当然失職することが定められています。
つまり、拘禁刑以上の刑罰が確定した瞬間、自動的に公務員としての身分を失います。これは行政側の判断を差し挟む余地がありません。
そして、この「拘禁刑以上」とは、執行猶予判決を含むものと考えられています。
したがって、実刑判決を免れることができても、公務員という職務を続行することができなくなります。
| 不起訴 | 失職しない |
| 罰金刑(略式罰金) | 失職しない |
| 執行猶予判決 | 当然失職 |
| 実刑判決 | 当然失職 |
国家公務員法
(欠格条項)
第三十八条 次の各号のいずれかに該当する者は、人事院規則で定める場合を除くほか、官職に就く能力を有しない。
一 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
二 懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 人事院の人事官又は事務総長の職にあつて、第百九条から第百十二条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者
四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
(欠格による失職)
第七十六条 職員が第三十八条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、人事院規則で定める場合を除くほか、当然失職する。
地方公務員法
(欠格条項)
第十六条 次の各号のいずれかに該当する者は、条例で定める場合を除くほか、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない。
一 拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
二 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者
三 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあつて、第六十条から第六十三条までに規定する罪を犯し、刑に処せられた者
四 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
(降任、免職、休職等)
第二十八条 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを降任し、又は免職することができる。
一 人事評価又は勤務の状況を示す事実に照らして、勤務実績がよくない場合
二 心身の故障のため、職務の遂行に支障があり、又はこれに堪えない場合
三 前二号に規定する場合のほか、その職に必要な適格性を欠く場合
四 職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合
2 職員が、次の各号に掲げる場合のいずれかに該当するときは、その意に反して、これを休職することができる。
一 心身の故障のため、長期の休養を要する場合
二 刑事事件に関し起訴された場合
3 職員の意に反する降任、免職、休職及び降給の手続及び効果は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、条例で定めなければならない。
4 職員は、第十六条各号(第二号を除く。)のいずれかに該当するに至つたときは、条例に特別の定めがある場合を除くほか、その職を失う。
懲戒免職(懲戒事由)
もし、不起訴や罰金刑にとどまり、法律上当然に失職しなかったとしても、懲戒処分を受けるリスクが残っています。
公務員の信用を失墜させたとして、任命権者が「懲戒免職」を下すケースです。
国家公務員法と地方公務員法には、それぞれ懲戒規定があり、「国民全体の奉仕者にふさわしくない非行があった場合」には懲戒処分をすることができると規定しています。
そして、懲戒処分の内容は、①免職、②停職、③減給、④戒告の4種類となっています。
起こした事件の種類によりますが、刑事事件を起こした以上、免職処分をなる可能性も十分にあるでしょう。
国家公務員法
(懲戒の場合)
第八十二条 ①職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として、免職、停職、減給又は戒告の処分をすることができる。
一 この法律若しくは国家公務員倫理法又はこれらの法律に基づく命令(国家公務員倫理法第五条第三項の規定に基づく訓令及び同条第四項の規定に基づく規則を含む。)に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
② 省略
地方公務員法
(懲戒)
第二十九条 ①職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれらに基づく条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
② 省略
罰金刑なら失職しない?
法律上、罰金刑は当然免職事由に該当しませんので、ただちに失職することはありません。
例えば、酒気帯び運転やスピード違反などの道路交通法違反や、軽微な暴行罪や傷害罪などで「罰金刑」となった場合です。
ただし、「懲戒免職」のリスクは残ります。
そのため、職務上の不利益をできる限り小さくするためには、不起訴(前科なし)の獲得を目指すべきです。
福岡県職員が、刑事事件により処分された例としては次のようなものがあります。
| 事件の内容 | 処分の内容 |
| 食料品を万引きし、その後不起訴となった | 停職3か月 |
| 電動キックボードを酒気帯び運転したケース | 停職10か月 |
| 入浴中の女性を盗撮しようとした。別件でストーカー行為をした。 | 停職12か月 |
| 酒気帯び運転により逮捕され、基準値5倍以上のアルコールを体内に保有していたケース | 免職 |
公務員の場合、私生活上の犯罪であっても「全体の奉仕者としてふさわしくない」と判断されれば、極めて厳しい処分が下される傾向にあります。
公務員であり続けるための法的戦略
刑事事件を起こしてしまった公務員の方が、公務員としての地位を維持して仕事を続けるためには、①拘禁刑以上の刑事処罰を回避すること、②懲戒処分を最小限に抑えること、③報道を回避することが重要であると考えられます。
- 当然失職回避のため、拘禁刑以上の刑事処罰を回避すること
- 懲戒処分を最小限に抑えること
- 懲戒処分軽減のため、報道を回避すること
最善策:不起訴処分の獲得を目指す
検察官が「起訴」せず、裁判が開かれない「不起訴処分」になれば、刑事処罰が科されることがありませんし、前科も付きません。
不起訴処分となれば、「拘禁刑以上の刑事処罰」を回避することができるので、当然失職の心配もなくなりますし、刑事処罰が科された場合と比較して懲戒処分も軽減が期待できるでしょう。
つまり、不起訴処分を獲得することが、失職を回避し、懲戒処分を最小限に抑えるために最も効果的なのです。
不起訴処分の獲得には《示談》が重要
容疑を認めており、被害者がいる事件の場合には、早期に弁護士を介して示談を成立させることが最も重要です。
なぜなら、被害者がいる事件では、示談をすることにより、不起訴処分となる可能性がとても高くなるからです。
起訴・不起訴の判断は検察官が行いますが、被害者の許し(宥恕)を得ることで、検察官が不起訴の判断を下しやすくなります。
被害者のいない事件の場合は?
被害者のいない事件の場合には、示談をすることができません。
この場合、通常は量刑相場に従って処分が下され、これを覆すのは非常に難しいでしょう。
典型例が酒気帯び運転です。
酒気帯び運転は被害者がおらず、相場に従って処分されます。初犯の場合には略式罰金になることが多いです。
他には、「被害者のいない盗撮事件」などがあります。これは、スマホのデータから盗撮した事実は確かだが、その被写体である被害者を特定できなかった場合です。この場合には、被害者との示談はできませんが、他の情状活動を行うことで不起訴になる余地があります。
次善の策:罰金刑への誘導
どうしても起訴を避けられない場合には、正式裁判(公判請求)を避け、罰金刑(略式罰金)にとどめるよう活動をしましょう。
例えば、弁護士からアドバイスをもらいながら情状活動を行い、弁護士が検察官に意見書を提出することが考えられます。
罰金刑であれば、法律上の当然失職は回避できるため、首の皮一枚つながる形になります。
どんな情状活動が考えられる?
例えば、「反省文を作成する」「事件の原因や再犯防止策を検討し、再犯可能性がないことをアピールする」「妻や両親に身元引受人になってもらい、再犯防止を図る」などが考えられます。
反省と悔悟の情を示すために「贖罪寄付」をする方法も考えられます。
事件の性質によって「何をするか」「どう行うか」、その具体的な活動内容は変わるので、是非弁護士にご相談ください。
報道回避に努める
公務員が刑事事件の容疑者となり逮捕されると、報道される可能性は高いです。身柄事件の場合には、弁護士を依頼したとしても、そのタイミングではすでに報道されていることも多いのです。
一方で、在宅事件(在宅捜査)の場合には、公務員であってもた職場に発覚しない可能性があります。
在宅事件(在宅捜査)とは?
在宅事件(在宅捜査)とは、逮捕されずに捜査が進む場合のことです。
この場合、捜査は進行していきますが、身柄を押さえられることはありません。
また、日常生活は今までどおり送ることができるので、仕事に行くこともできますし、プライベートも自由に過ごすことができます。
警察の呼び出しがあった際に、任意に出頭すればよく捜査による負担がそれほど大きくありません。

確かに、公務員という性質上、警察から職場に連絡が行く危険性が高く、一般的にはこれを想定しておくべきでしょう。
しかし、弁護士を付けて、弁護士から警察に対して、職場連絡をしないように折衝することで、職場への発覚を回避できる可能性が生まれます。
そうすれば、懲戒免職を避けられる余地が生まれますし、事件の報告をするとしても、適切な謝罪と経緯説明を行うことで、懲戒処分を軽減できる可能性が生まれるでしょう。
失職回避には弁護士の協力が不可欠
先ほど述べたとおり、今後も公務員として働き続けるためには、①当然失職を回避し、②懲戒処分をできるだけ抑えて、③報道を回避することが重要となります。
これらの目的を達成するためには、示談活動や情状活動、報道阻止のための警察との交渉が必要になります。
専門家である弁護士であれば、これらの活動を実効的に行うことができるでしょうが、一般の方にはなかなか負担が大きく、現実的ではありません。
そこで、失職回避のために積極的な活動を行うには弁護士の協力が不可欠と言えるでしょう。
公務員の身分を守るために
公務員にとっての刑事事件は、一般の方以上にキャリアに直結する死活問題です。
判決が出てからでは、上司が「残ってほしい」と思っても、法律の壁を崩すことはできません。
「拘禁刑以上の刑」を回避できるかどうかは、捜査段階からの弁護活動が勝負を分けます。
もしあなたやご家族が事件に関わってしまったら、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
公務員の方は非常に真面目で、それゆえに家族や知人に迷惑をかけまいと、お悩みを自分ひとりで抱え込んでしまう人が多い印象です。
しかし、ひとりで悩んでいても不安が募る一方です。
このような時こそ、専門家である弁護士に頼るべきです。
私たち、福岡弁護士法律事務所の弁護士は、これまでに公務員の方々の事件を担当し、報道を回避したり、前科を回避してきました。無事解決した皆さまは今も平穏に公務に励んでいます。
弁護士に相談することは敷居が高いと思われるかもしれませんが、行動こそが未来を作る第一歩です。
福岡の刑事弁護士にお悩みを打ち明けてください。




